『愚行録』
貫井徳郎の同名小説を妻夫木聡、満島ひかりで映画化。
ネガティブなオーラ満載のねっとり濃厚なミステリーです。
育児放棄で娘を虐待し、拘留中の光子（満島ひかり）を気にかけて、たびたび面会しつつ、兄の田中（妻夫木聡）は雑誌記者として、田向一家惨殺事件の謎を追いかけていた。
田向（小出恵介）と妻の友希恵（松本若菜）とその娘は惨殺され、犯人はまだ特定できていない。
田中が夫婦の友人たちのもとに足を運び取材をすると、理想的な一家に見えていた田向夫妻の衝撃的な過去が明るみに……。
裏切り、嫉妬、優越感など、他者と自分を比べたり、見下したりという行為に嫌気がしつつも、田向夫妻の過去を知れば知るほど、殺人の動機が見えてくる展開は、引き込まれます。
決して後味がよくないけれど、衝撃の真実という意味では、かなりインパクトがあるどんでん返し映画です。
『パーマネント野ばら』
西原理恵子の原作漫画を吉田大八監督が実写映画化した愛情あふれる物語。
どんでん返しがありそうな映画ではないと思いきや、実は鮮やかで感動的などんでん返しがあるのです。
なおこ（菅野美穂）は、離婚して、幼い娘と一緒に実家のある田舎町に帰ってくる。
美容院を営む母（夏木マリ）、幼馴染のみっちゃん（小池栄子）、ともちゃん（池脇千鶴）はともに男運が悪く、DV男に悩まされていた。
一方なおこは中学教師のカシマ（江口洋介）と付き合っているが、カシマはデートしても突然いなくなってしまうような人。
なおこは寂しくてたまらなかったが……。
町の人が全員親戚のような田舎町特有の密な関係が描かれています。
個性的なお母さん、豪快なみっちゃん、天然なともちゃんの中で、なおこはいちばんまともなタイプかもしれない……と思ったら、ラストのどんでん返しで、これまで観ていた世界や人々の印象がガラリと変わります。
でもそれは実に感動的で、切なさと同時に人の温かさが胸いっぱいに広がり、涙が……。
泣けるどんでん返し映画の良作です。
『思い出のマーニー』
© 2014 Studio Ghibli・NDHDMTK
スタジオジブリが、ジョーン・Ｇ・ロビンソン原作の著『思い出のマーニー』をアニメ映画化。
思春期の少女の葛藤を包み込むような物語は、心を浄化するような美しさがありながら、ミステリーのような一面も持ち合わせた作品です。
杏奈は誰にも愛されていないと思っている孤児の少女。
叔母に引き取られて生活していたが、ある日、海辺の屋敷で暮らすマーニーという金髪の少女と出会う。
マーニーと杏奈は仲良くなり、杏奈にとってマーニーは唯一心を許せる存在になるのだが、マーニーにはある秘密があった……。
自己評価が低く「どうせ私なんて」と、何もかもにイライラしている思春期の杏奈。
そんな彼女にとってマーニーは、初めて自分を受け入れ必要としてくれた最高の友。
マーニーとの交流で、杏奈は自分が何を求めているのかがわかり、周囲の人達の優しさにも気づいていくのです。
ヒロインのメンタルの変化を描きつつ、新たな登場人物を配し、日記などの小物でマーニーの謎を強めていく演出が素晴らしい。
最後のどんでん返しも、観客を驚かせる意図ではなく、あくまで杏奈とマーニーの関係性に寄り添ってて丁寧に描かれているので、じんわり感動できます。
『名も無き世界のエンドロール』
複雑な家庭環境で育ったキダ（岩田剛典）とマコト（新田真剣佑）は、小学校の時に出会った同じ境遇の少女ヨッチ（山田杏奈）といつもつるんで過ごしていたけれど、ある日ヨッチが彼らのもとから去ってしまう。
寂しさを抱えながらも自動車整備工場で働いていた二人の前に、ある日、高級スポーツカーの修理に人気モデルのリサ（中村アン）が現れる。
マコトは彼女に惹かれ、セレブな彼女とつりあう男になりたいとキダのもとを去ることに。
マコトの突然の行動にキダは驚くが……。
行成薫の同名著作を『ストリベリーナイト』『累-かさね-』の佐藤祐市監督が映画化したのが本作。
原作もどんでん返しが評判だったようですが、それもそのはず、本作のどんでん返しはこの物語の核となる大きな秘密だからです。
ヒントはヨッチとマコトは付き合っていたこと、キダはそんな二人を見守っていたこと。
ヨッチがいなくなった理由、その真相をマコトが気づいたことなどなど、物語にはさまざまな伏線がはられており、何気ないセリフが真相につながっているなど、すべてのシーンが見逃せません。
最後、とても切ない気持ちになる哀愁どんでん返しミステリーです。
