10.ワカンダ(マーベル『ブラックパンサー』)
初登場は1966年に出版されたマーベルの『ファンタスティック・フォー#52』。
スタン・リー&ジャック・カービーによって、高度に文明が発達した東アフリカの国としてワカンダは生み出されました。
国王であり、国の守護者でもあるブラックパンサーの故郷として描かれています。マーベルのブラックパンサーはアメリカの主要コミックではじめてのアフリカ系スーパーヒーローでもあります。
ワカンダの描写においてアフリカ南部に実在するレソト王国から多くの着想を得ているMCUでは、山々とジャングルによって隔絶され、グリーンエネルギーとヴィヴラニウムによる国力を誇る国として描かれています。
9.不思議の国(『不思議の国のアリス』)
ルイス・キャロルの19世紀の児童書『不思議の国のアリス』のファンタジー世界である不思議の国。
この国には、「いかれ帽子」や「チェシャ猫」、「芋虫」までありとあらゆるタイプの、印象に残るシュールなキャラクターが暮らしており、作者ルイス・キャロルの身の回りにいた実在の人物をほのめかしている、とされています。
実際、不思議の国の世界観は、実在する場所や出来事をフィクションで装飾したもので構成されています。
不思議の国の世界そのものはヴィクトリア時代、特に当時の社会の子供たちの窮状を批判したものですが、海、森、庭など様々な風景を持つ不思議の国はその名に恥じないファンタジー世界として知られています。
8.キャメロット(『アーサー王伝説』)
紀元5世紀、ローマ帝国がイギリス諸島から撤退した後の混沌と激動の中から生まれたのが、伝説のブリトン人の君主アーサー王が住まう王国キャメロットでした。
アーサー王と彼の王国キャメロットは、七王国時代のイングランドに実在したドゥムノニア(ダムノニア)王国から、キャメロット城はティンダジェル城から着想を得たとされています。
しかし、キャメロットはその後、中世の文学から現代の映画やテレビ番組に至るまで様々な形で描写されてきました。典型的なのは地平線を見下ろす堂々とした城がそびえるという、中世の牧歌的な風景ですね。
その地理的な不明瞭さゆえか、王国キャメロットは単なる物理的な場所というよりも、騎士道や高貴な冒険を連想させるシンボルとして描かれるようになりました。
7.大陸(『ウィッチャー』)
ポーランドの作家アンドレイ・サプコフスキによる『ウィッチャー』シリーズは、近年着実に世界的な人気を獲得してきていますが、物語の舞台である中世ファンタジー世界「大陸」のユニークで多様な環境がフランチャイズの成功に大きく寄与しています。
サプコフスキによる架空の世界のさまざまな場所、キャラクター、モンスターの多くは、東ヨーロッパの歴史やスラヴ民族の民間伝承から着想を得て生み出されました。
例えば、ポーランド南西部のシレジア地方にある歴史的な都市ヴロツワフは、『ウィッチャー』世界における小国の一つレダニアの都市オクセンフルトに大きくインスピレーションを与えた場所として知られています。
北欧の影響を受けたスケリッジ諸島やトゥサンの田園風景、ノヴィグラドの賑やかな港町まで、『ウィッチャー』の世界は幅広い地域を描いており、同タイトルのビデオゲームやドラマシリーズにも共有される豊かな世界観が形成されました。
6.アトランティス(「ギリシャ神話」)
最も古いファンタジー世界の一つであり、何千年にもわたり人々の心を惹きつけてやまない存在であるアトランティス。
プラトンの著作の中ではじめてその存在について言及されたアトランティスの伝説は長年にわたって人々の間で語り継がれ、成長と変形を繰り返してきた結果、海に飲み込まれ時間と共に忘れ去られた古代の理想都市…という独自の伝承が生み出されることとなりました。
アトランティスが実在したのか否かについては、いまだ多くの議論が交わされていますが、エーゲ海に浮かぶサントリーニ島でかつて栄えたミノア文明とその後の巨大火山の噴火による破壊がアトランティスのモデルの可能性が高い、とみなす歴史家も多いようです。
歴史としての真偽はともかく、アトランティス神話は映画や漫画などさまざまな大衆文化に幾度となく影響を与えてきました。